南海トラフ巨大地震に備える 東日本大震災の経験から学ぶ防災セミナー
南海トラフ巨大地震の発生が懸念される中、2026年2月26日(木)に、BISAI-FARM主催で過去の災害から学ぶことを目的とした防災セミナーが、宇和島市市役所にて開催されました。講師を務めたのは、東日本大震災当時に宮城県警察本部長として災害対応の最前線に立った竹内直人氏です。
竹内氏は現在、警察関係者の災害経験を社会へ伝える活動を行う NPO法人 災害時警友活動支援ネットワークの代表理事として活動しています。
本講演では、2011年の東日本大震災で実際に起きた出来事を振り返りながら、巨大災害に対して社会がどのように備えるべきかについて語られました。
震災から十数年 ― なぜ今、経験を語るのか

講演の冒頭で竹内氏は、震災の経験を語り続ける理由について次のように語りました。
「もうすぐ十五年になります。 あの時に何が起こったのか、どんな苦労があったのか。 それをお伝えすることが、応援してくれた全国の方々への恩返しだと思っています。」
東日本大震災では、日本の災害対応の仕組みが大きな試練に直面しました。警察、消防、自衛隊、自治体、そして地域住民が、それぞれの立場で前例のない状況に対応しなければならなかったのです。
English Summary
Nearly fifteen years have passed since the Great East Japan Earthquake. The speaker emphasized that sharing experiences from the disaster is a way of expressing gratitude to those who supported the recovery efforts. These lessons are crucial for preparing for future large-scale disasters such as the anticipated Nankai Trough earthquake.
災害発生直後 ― 最大の問題は「情報がないこと」

震災直後、宮城県警察本部には膨大な情報が無線や電話で流れ込んできました。しかしその多くは断片的で、真偽を確認することができませんでした。
「一番困ったのは情報収集でした。 津波が来ていることは分かる。 しかし、どこで何が起きているのかが分からない。」
災害時には通信の混乱が発生し、情報が誤って伝わることもあります。
「若林ジャンクションまで津波到達という情報が 若林区役所まで津波到達と聞き違えられて 本部に報告されることもありました。」
こうした情報の錯綜は、災害対応の初動を大きく難しくします。
English Summary
Immediately after the disaster, gathering accurate information was extremely difficult. Communication networks were overloaded, and many reports were incomplete or misunderstood. This confusion made it challenging for authorities to understand the real situation on the ground.
避難誘導と警察官の犠牲

東日本大震災では、宮城県警だけでも14名の警察官が津波により殉職しました。
「住民がまだ残っている限り、 警察官は先に逃げることができません。」
しかし竹内氏は、指揮官としての反省も語りました。
「私は撤退命令を出せませんでした。 撤収させなければいけないという発想に至らなかった。 これは本当に痛恨の思いです。」
災害対応では、住民の安全と救助活動、そして隊員の安全という三つの価値が衝突します。
English Summary
Fourteen police officers in Miyagi Prefecture lost their lives while guiding residents to safety during the tsunami. The speaker reflected that he could not issue a withdrawal order at the time, highlighting the difficult decisions disaster leaders must make between saving lives and protecting responders.
救助活動の現実 ― 助けたいが助けられない

震災当日、警察には1700件以上の救助要請が寄せられました。翌日には2300件を超えました。
「助けてくださいという110番が殺到しました。 しかし正直、全部には対応できませんでした。」
理由は単純でした。道路が瓦礫で塞がれ、停電で夜は真っ暗、余震も続いていたからです。
「行きたいんです。 でも、行けないんです。」
この言葉は、災害対応の現実を象徴しています。
English Summary
More than 1,700 emergency calls were received on the first day and over 2,300 the next day. However, rescue teams could not reach many locations due to blocked roads, power outages, and ongoing tsunami warnings.
遺体捜索という過酷な現場

震災から数日後、救助活動は生存者の捜索から遺体捜索へと変わっていきました。
「ピーク時には一日に千体の遺体が搬送されました。」
しかし、遺体安置所や医師、火葬場などの不足が大きな問題となりました。
English Summary
At the peak of recovery operations, around 1,000 bodies were transported in a single day. Authorities struggled with shortages of morgue space, medical examiners, and cremation facilities.
避難所で起きる社会問題

避難生活が長期化すると、避難所でもさまざまな問題が発生します。
「避難所ではDVやトラブルが発生しました。」
そのため、地域のリーダーやボランティアの存在が重要になります。
English Summary
Long-term evacuation life can lead to social problems such as domestic violence, theft, and conflicts. Community leadership and volunteer support are essential to maintain order in evacuation shelters.
デマとSNSの危険
震災時にはSNSで多くのデマが広まりました。
「外国人犯罪集団が略奪しているというデマが広がりました。」
後の調査では、7割以上の人がその情報を信じていたといいます。
English Summary
False rumors spread rapidly on social media during the disaster. One rumor about foreign criminal groups looting the city was believed by more than 70% of people despite having no factual basis.
最大の教訓
「知識がないと、想像力は働きません。」
過去の災害を学び、その経験を社会で共有することが、未来の災害への備えにつながります。
English Summary
The speaker emphasized that knowledge enables imagination. Understanding past disasters allows societies to better prepare for future emergencies.
まとめ ― 南海トラフ巨大地震への備え
政府の想定では、南海トラフ巨大地震が発生した場合、四国地方でも大きな被害が予測されています。
今回の講演は、単なる震災の記録ではなく、未来の災害に備えるための知識を共有する機会となりました。
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関連リンク
- NPO法人 災害時警友活動支援ネットワーク 様
- BISAI-FARM 様